先日は古代クロマニョン人やゲルマン人が、縄文人と同類だったり、弥生人に入り込んでる可能性が見えました。
そうすると彼らの神話も、日本と同じ要素があるかもしれませんよね。
その証拠になり得るのが、原初の神だった宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢ)です。
何しろとある辞書に「宇摩志阿斯訶備比古遅神は世界樹的だ」って書いてあるのだから。
原初の神、宇摩志阿斯訶備比古遅神
ヨシ - Wikipedia (アシとヨシは同じ)
「古事記」の天地開闢の時に、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)が登場しています。「日本書紀」では可美葦芽彦舅尊(うましあしかびひこじのみこと)。
定説では「宇摩志」とは素晴らしいと称賛する意味で、「阿斯訶備」は葦芽で、犬や狼のキバのような葦(アシ、ヨシ)の芽が地中から出た姿。「比古遅」とは男性の尊称を表しているとか。
「素晴らしい葦の芽が出たような男神」ということで。ちょっと意味わかりません。葦の芽を神格化したようです。
「日本書紀」は基本的に、複数の書物を元に作られた書物でした。そのため内容には「一書によれば(別伝によれば)」という注釈があったりするのですが。
一書によれば、可美葦芽彦舅尊は存在していません。また一書によれば原初の神でした。一書によれば2番めの神だったりしました。また「古事記」では、造化三神に続く4番目に生まれた神となってました。全然違いますね。
この摩訶不思議な神の名、実は「日本書紀」で原初の神とされる国常立命にも共通してたりするのです。国常立命は、基本的には龍神としても祀られる神さま。
「立」とは学研漢和大字典によると「葦の芽が出た姿」であり、国常立は「四角い土地(国)から三角形の葦の芽が出たような神」を表すものでしたので。この名からは、ピラミッド的な要素も垣間見えるのですが。
ひょっとすると宇摩志阿斯訶備比古遅神は、国常立神と同一存在、あるいは同種の神さまであるのかもしれないですyo。
以下の「神名データベース」を見てみると、興味深い解説がありました。
宇摩志阿斯訶備比古遅神は、「世界樹的な色彩が強い」とか言ってます。
これは無視できないところ。要するに原初の宇宙空間に葦の芽みたいな神が現れ、それが世界を形作っていったような感じです。
世界樹とは何か、自分でもあまりわかってませんでしたので、解説をはさみます。
今の科学では、地中はまん丸な形だとか言われてますが、古代には地球は平坦である、いわゆるフラットアースであると考えられてました。
日本神話では、原初の大地は水に浮かぶ油のようだとか言ってたりしましたし。四方には青龍などの四神が守護してるとか言われてたので、倭人はこの世界はまっ平らだと考えたようです。
それでその平らな世界は、巨大な樹木の階層として存在すると考えられていたのが、世界樹の骨子となります。世界樹には人間が住むエリアのほか、神が住まうエリア、地底の地獄エリアなども存在しました。
この世界樹の神話はアジアやアメリカなど世界中にありましたが、特に色濃く伝えられたのが欧州のドイツや北欧の方面です。
「ユグドラシル」は元々はゲルマン系で古ノルド語を使っている、北欧人の神話だったとか。「古エッダ」と呼ばれる古代北欧の神話伝承集があり、その中に登場していました。古代のゲルマン系だったザクセン人も、イルミンスールとして世界樹神話を伝えています。
ユグドラシルは世界を形作るトネリコの巨樹であり、上はアースガルズから下はヘルヘイムまで、9つのエリアを有してるとか。
ユグドラシルは古ノルド語で「恐るべきものの馬」だそうで。ユグ(ygg)は北欧神話の最高神オーディンのこと。要するにオーディンの世界だったわけです。
ユグドラシルのエリアと特徴を、図に表すとこうなってます。
ユグドラシル - Wikipediaの画像を元に作成。
【天上界】
ヴァナヘイム(ヴァン神族が住む)光り輝く者
アールヴヘイム(エルフ族が住む)
アースガルズにはイザヴェルという平原があり、アース神族はそこに神殿(グラズヘイム、ヴィーンゴールヴ)と祭壇を築き集まっている。鍛冶場があり、黄金によっていろんな道具を作るという。
太陽神、月神、鍛冶神、豊穣神、軍神、雷神など様々な種類をつかさどる神々がいた。
ユグドラシルのてっぺんにはフレースヴェルグ(死体を飲み込む者)というワシがいて、風を起こす。その目の間にいるヴェズルフェルニルというタカは、風を打ち消すという。これは主神オーディンが最初期には風の神、嵐の神だったことが影響してるよう。
ユグドラシルの幹には栗鼠のラタトスクというメッセンジャーがいて、天上から地下まで走り回ってる。
天上界から地上・地下には、神が架けた橋ビフレストがある。
【地上界】
ミズガルズ(人間族が住む)
ヨトゥンヘイム(巨人族が住む)
ムスペルヘイム(灼熱の国が住む)
スヴァルトアールヴヘイム(スヴァルトアールヴ族が住む)ドワーフ
四頭の牝鹿がユグドラシルの樹皮を食べている。
地上界の外は全て海であり、その海ではヨルムンガンド(大蛇)が輪っかをつくり取り囲んでいる。
【地下】
ニヴルヘイム(霧の国、氷の国)
ヘルヘイム(死者の国、悪人の魂が向かう場所)
地下には3つの根がある。
ヘルヘイムは女王ヘルが治める死者の国。
地下には運命を占うウルズの泉と、知恵と知識を与えるミーミルの泉がある。
根っこにもヨルムンガンドがいる。
根の下にはニーズヘッグという黒きドラゴンがいて、週末の日(ラグナロク)には死者を乗せて飛び回るという。
宇摩志阿斯訶備比古遅神から溢れ出す世界樹の要素
上記のとおりユグドラシルには九つの世界があったのですが、大きく分けると天界、地上界、地下の3つの階層でした。
一方日本神話では上空に高天原があり、人間界の葦原の中つ国があり、黄泉や根の国という地下世界に分かれてます。日本神話の階層も3つだったんです。
ユグドラシルと同じような階層構造でありつつ、世界が明らかに植物に例えられていますよね。つまりこの世界は、宇摩志阿斯訶備比古遅神という葦牙が成長した後の、世界樹であるとの思想が根底にあるのかもしれんのですyo。
宇摩志阿斯訶備比古遅=葦牙(アシカビ
— たっちゃん@古代史研究+アート (@t7a7t0o1) 2023年11月5日
yggdrasill ユグドラシル=世界樹(古ノルド語
ygg オーディン 北欧神話の神(怒りの神、オージン
drasill 馬
宇摩志阿斯訶備比古遅=世界樹
葦牙(イガ)=ygg
葦牙(怒イカ)=怒りの神
葦・阿斯=アジ=オジ
宇摩=drasill(馬
一致する件
「葦牙(あしかび)」という漢字は「イガ」と読めます。
これユグドラシルの神オーディンの別名「ygg(ユグ・イグ)」や、神格である「怒り(ika)」に対応するのです。
「比古遅」は男神であることを表す尊称です。
「阿斯訶」はオーディン系統の神が住むアースガルズの「アースガ」のことのよう。
「宇摩」はdrasill(馬)と完全に一致しているでしょう。
つまり世界樹ユグドラシルとオーディンは、「宇摩志阿斯訶備比古遅=葦牙」のなかに表されているというわけでした。
・天上界
そういえば高天原って、音読みすると「こーでん koden」になるんですよね。
こーでん(高天)koden…oden
オーデン oden(オーディン)
これがオーディンを意図したものか、偶然かは不明ですが。
高天原の天津神が、アース神族と対応するみたいです。すると国津神がヴァン神族に対応するのかも知れないです。
アースガルズにはイザヴェルという平原には神殿あったのですが、日本で言うと天の安の河原みたいな場所に、八尋殿があったみたいな感じです。
アースガルズの神々はいろんな道具を作ったとあるのですが、日本神話では天照大神が高天原の岩戸に引きこもった時、八百万(やおよろず)の神々が様々な道具を作ったことが記されているので似てますね。
ユグドラシルの天界には太陽神、月神、鍛冶神、豊穣神、軍神、雷神など様々な種類の神様がいたように多神教でしたが、これは日本の八百万の神々と似ています。神様の種類までも似てる。
エルフ族もいました。それは日本神話に登場する樹木の精霊久久能智神(くくのち)。久久能智は「九つ」のことであり、ユグドラシルの九つの世界に対応している感じがしました。しかも木の精霊と言えばエルフのことなので、当てはまっている。
記紀神話で久久能智の存在感は小さいですが、日本の神社のご神木には木の精霊がいると言うので、「気のせい」じゃないんですね。
ユグドラシルでは天上界と地上を結ぶ橋「ビフレスト」があったのですが、これがどうやら日本神話における天浮橋(あめのうきはし)と全く同じ機能でした。
あと天御柱というのが地底から天空まで貫いてましたが、これがどうも「木の柱」なので、ユグドラシルの幹という感じがします。天御柱にはバベルの塔やら、なにか別の要素がくっついてるみたいですが。
・地上界
人間界である葦原の中つ国は、別名「瑞穂国(みずほのくに)」です。これがユグドラシルの人間界「ミズガルズ」の「みず」と一致してるのは、偶然じゃなかったです。
ユグドラシルには巨人族が住んでました。日本ではダイダラボッチ(大太良法師)が思い起こされますが、各地にいたそうです。やたらデッカい人がいたら、ダイダラボッチの生まれ変わりですかね。
ユグドラシルでは人間と巨人族の居住地は別々でしたが、日本の場合は人と巨人族の所在地は重なってました。ダイダラボッチはあちこちに、山や池や川を作ったとかの伝説が各地に残っています。
原初の神、宇摩志阿斯訶備比古遅神(うましあしかびひこぢのかみ)は世界樹的な色彩が強いって辞書にあったので
— たっちゃん@古代史研究+アート (@t7a7t0o1) 2023年11月9日
世界樹ユグドラシルに日本神話を対応させるとこうなる。詳しくはブログで…
(wikipediaの画像を使用) pic.twitter.com/Q50JDcX2Om
・地下
葦原の中つ国(人間界)の地下に、「根の国」があります。別名で根の堅洲国(ねのかたすくに)とも言いました。世界は宇摩志阿斯訶備比古遅神(葦牙)という世界樹であるなら、地下に「世界樹の根っこがある」と考えると腑に落ちるわけです。
地下には黄泉という別の異世界もあり、そこはイザナミ=黄泉大神が支配して邪気に満ちたところです。
これらがユグドラシルにおける、ヘルヘイムとニヴルヘイムとに対応してます。
ヘルヘイムは地獄(ヘル)と似たような場所で、神界から追放された女王ヘルが統治した場所でした。日本神話ではイザナミが高天原で死んで、黄泉の女王「黄泉大神」になったのとにてますね。
ユグドラシルでは、天界の橋ビフレストで、地上や地下へワープすることが可能でした。一方日本神話では、天界から地上までは天の浮橋が連結していたので、非常に良く似ています。
また天界には地下の黄泉へ行く穴「黄泉平坂」もあったので、ますますビフレストと同じです。天の浮橋がビフレストだとすると、黄泉平坂はそれに連結する道だったのかもしれません。
その他にも出雲の素戔嗚尊の近くから、根の国に繋がる入り口があったようです。
あるいは天界から地下まで貫く、天御柱もそんな役割があるみたいです。「日本書紀」をみれば、太陽と月は天御柱から天に上げられたとありますし。天御柱は世界樹の幹と同じく、天から黄泉まで貫くものだったんですかね。
素戔嗚尊が天界の出雲、海原、地下の根の堅洲国までを管轄としたのは、天界と地下を行き来したアース神族と同じ行動パターンと考えればしっくりきますし。
一説に地底の黄泉は「常世(とこよ)」の中に含まれるといいますが、多くの場合常世は海の彼方なので曖昧な解釈をするしかないです。もしかすると天界の橋ビフレストが地下に繋がっている特殊構造であるように、常世も天界や地下に繋がる特殊な場所なのかもしれんです。
そういえば大国主神が素戔嗚尊からの試練を受けた時に、道案内のネズミが登場しました。あのネズミ、地上で焼け死にそうな大国主を、地下の穴(根の国)導いて命を助け、捜し物の矢を渡したのですよね。まさにメッセンジャーで、役割がユグドラシルにいたラタトスクと被っている感じがします。
ユグドラシルでは地下の世界に泉があるのですが、日本神話でも地下は黄泉という泉で表されています。黄泉という言葉は元々古代中国の思想が入ったものですが、地底に泉があるというユグドラシルの認識も合わさったんじゃないですかね。
ユグドラシルの最下層には黒い龍や、ヨルムンガンドという大蛇がいました。黄泉の出入り口がある出雲にはヤマタノオロチがいましたので、龍の存在も関連付けがあるようです。
古代メソポタミア全史-シュメル、バビロニアからサーサーン朝ペルシアまで (中公新書)小林 登志子(著)
日本の民族と神話は、ユーラシア各地と日本の土着のものが合さったものでした。日本神話には、古代中国、古代インド、古代エジプト、旧約聖書とか、大陸の様々な要素がてんこ盛りなんですよ。
しかしこうして比較してみると、東アジアにある神話より、欧州のユグドラシルとの一致度のほうが高いように思いませんか?不思議ですね。
それは古代の縄文人とクロマニョン人やゲルマン人の先祖が、結びついてた仮説を踏まえると無いともいえないですよ。彼らは縄文人と同じ竪穴式住居に住んでたわけだし、古英語調べたら、古日本語に似てますし。
天地開闢の時に世界樹が生まれ始めたのを葦牙(あしかび)と言っている
— たっちゃん@古代史研究+アート (@t7a7t0o1) 2023年11月6日
縄文人の宗教観や世界観は、世界樹が中心だったかもしれん
と考えると 何か縄文時代が違ってみえてくる感じがする
どこが世界樹の起源だとか、そういう話は抜きにしたいです。人類がおぎゃーと生まれた時から連綿と育まれてきた、共通した思想だったと思うのですよ、世界樹というのは。ユグドラシル系の世界樹は、ゲルマン系と日本に色濃く残ったんですね。
縄文人だけでなく弥生人に至るまで。倭人は「この地球は世界樹である」との世界観や宗教観を、確かに持ってたような気がしてきます。
ぽちされてたすかり
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