大国主の物語は、あんまり読む機会がないですね。
と思うので「古事記」にある話をわかりやすく、あらすじにしてみました。
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○いつも助かっております
大国主の物語のあらすじ
スサノオが出雲でヤマタノオロチ退治した後、助けたクシイナダ媛とのあいだにオオアナムチ(大国主)が生まれた。
大国主の兄軍団(八十神)はいっぱいいるんだけど、みんな美人のヤガミヒメと結婚したいらしい。兄軍団は1番ダメな奴そうな大国主に荷物を持たせて団体で因幡に行った。
大国主は因幡の海岸で、死にそうになってるウサギに出会って助けたよ。助けたウサギは、大国主がヤガミヒメを得て、兄軍団はふられるって予言をした。結局ウサギの言うとおりになったので、兄軍団は嫉妬と激怒モードで大国主を殺そうとしているね。
兄軍団が焼けた巨石を落として、大国主は焼死した。
兄軍団が森に罠をつくって、大国主は圧死した。
でもそのたびに母神が大国主を蘇らせてくれる。それを知った兄軍団は、ますます悪の心を増大させて、大国主を追いかけ回すよ。お前らそんなことしてるからフラれるんだよ。母神は大国主に殺される前に逃げなさいと言って送り出したよ。
スサノオは逃げてきた大国主を試そうとしているね。蛇のいる部屋に寝かせたり、ムカデとハチの部屋に寝かせたり、大国主のいる野原の火を放ったり。大国主はそのたびに妻になったスセリヒメや、ネズミが案内した地下空洞に助けられて難を逃れたよ。
スサノオに認められて、頭のシラミをとってあげるなどで仲直りした大国主だけど、殺されそうになって腹が立ってたので、スサノオを家に縛り付けて石の蓋をしちゃったよ。
これに怒ったスサノオは、逃げる大国主を追いかけた。逆ギレか。だけどスサノオは大国主の力をちゃんと認めて、出雲の支配権を認めたよ。
大国主はスサノオにもらった強い武器で、やってきた兄軍団をフルボッコにしてやった。ざまあみやがれ。
スクナヒコナとの出雲の国作りが始まった。出雲は大国主のはたらきで、農業や医療のある豊かな国に成長した。宮殿を建てたけど、これが初代の出雲大社。大国主は妻を何人もめとって、子供がいっぱい生まれたよ。
しばらくして天照大神が出雲の国に目をつけて、出雲国を譲れと迫ってきた。大国主は天照大神を支配者と認めて、出雲の支配権を譲ったよ。無血開城ってやつだ。その後大国主は隠居生活になりましたとさ。
こんな話だったのですが、大国主って集ストに追いかけられて苦労ばっかり。
気になったのが、大国主が受けた仕打ちについて。なんかどこかで見たような気がすると思ったので。
考えてみたら、仏教のアレだった。
八大地獄
衆生が住む閻浮提の下、4万由旬を過ぎて、最下層に無間地獄(むけんじごく)があり、その縦・広さ・深さは各2万由旬ある。その上の1万9千由旬の中に、下から大焦熱・焦熱・大叫喚・叫喚・衆合・黒縄・等活の7つの地獄が重層しているという。
これらを総称して八大(八熱)地獄という。これらの地獄にはそれぞれ性質があり、そこにいる衆生の寿命もまた異なるとされる。
また、八熱地獄の周囲ないし横に八寒地獄があるともいわれる。
長阿含経の説
長阿含経(じょうあごんきょう)は原始仏教の経典とされ、それによると地獄は、八熱地獄と十地獄に大別され、八熱地獄に付随する小地獄は全て共通の十六種類であるという。
須弥山世界(仏教における、人間界を含む宇宙の全て)の一番外側を輪のように取り囲む鉄囲山(てっちせん)は内と外の二重構造であり、その間に地獄や閻魔王宮があるとしている。つまり、現在の通説である地獄=地下世界とは異なり、いわゆる「世界の果て」にあるとしている。
二重鉄囲山の間は太陽や月の光が届かない暗黒世界で、僧佉(そうきょ)という大風が常に吹き荒れている。この風はもし人間界に吹いてきたら全てのものを吹き飛ばし粉々にしてしまう威力を持ち、さらに超高熱の炎と悪臭を伴っている。人間界の物に例えるなら、大型爆弾などの爆風や炎、衝撃波あたりがイメージとして適当かと思われる。
現在と異なり、八熱地獄は階層構造ではなく、十地獄ともども世界をぐるりと取り囲む形で配置されている。その名は第一地獄から順に、 (1) 想地獄、 (2) 黒縄地獄、 (3) 堆圧地獄、 (4) 叫喚地獄、 (5) 大叫喚地獄、 (6) 焼炙(しょうしゃ)地獄、 (7) 大焼炙(だいしょうしゃ)地獄、 (8) 無間地獄である。想地獄は現在の等活地獄、焼炙・大焼炙地獄は焦熱・大焦熱地獄に対応していると思われるが、具体的な内容は不明。
八大地獄は犯した罪の内容によって送り込まれる場所だとか。以下の理由で死後に送り込まれる。
(1) 想地獄(等活地獄) 殺生
(2) 黒縄地獄 殺生、盗み
(3) 堆圧地獄(衆合地獄)殺生、盗み、邪淫
(4) 叫喚地獄 殺生、盗み、邪淫、飲酒
(5) 大叫喚地獄 殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語(うそ)
(6) 焼炙地獄 殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語、邪見(仏教の教えとは相容れない考えを説き、また実践する)
(7) 大焼炙地獄 殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語、邪見、犯持戒人(尼僧・童女などへの強姦)
(8) 無間地獄 殺生、盗み、邪淫、飲酒、妄語、邪見、犯持戒人、父母・阿羅漢(聖者)殺害
らしいですが。
とりあえず殺人事件を起こしてなければ、これらの地獄に落ちる心配はないという感じみたいですが、人を死追いやるイジメの場合や、間接的や偶発的に殺してしまった場合はどうなるのだろう。
それぞれの地獄がどんな内容なのかを見ていくと、
(1) 想地獄(等活地獄)
殺人に加え、虫を殺した者もここに来る。鉄の爪や刀剣で殺し合う。死ぬと蘇らせられ、また殺し合いとなることを繰り返す。
(2) 黒縄地獄
切り裂かれ削られ、焼かれたり、鉄の山に登って落とされると湯に落ちて煮られたり
(3) 堆圧地獄(衆合地獄)
美人が誘惑してくるが、鉄の山や象の足などに押しつぶされる
(4) 叫喚地獄
熱湯の大釜で煮られたり、鉄の室で焼かれたり
(5) 大叫喚地獄
焼かれたり煮られたり(10倍)
(6) 焼炙地獄
焼かれたり煮られたり(大叫喚地獄の10倍)串刺しにされたり
(7) 大焼炙地獄
上記の地獄ぜんぶ(焼炙地獄)の10倍
(8) 無間地獄
まっさかさまに地の底へ落ち続けて2000年、たどり着くと大焼炙地獄の1000倍やられる。
(以下ウィキペディア)背丈が4由旬、64の目を持ち火を吐く奇怪な鬼がいる。舌を抜き出されて100本の釘を打たれ、毒や火を吐く虫や大蛇に責めさいなまれ、熱鉄の山を上り下りさせられる
このほかに
・八寒地獄
とかいうのがあるらしい。後から付け加えてみた感がすごいのですが。
基本的になるのが八大地獄ということでした。内容は斬殺、圧殺、焼殺、熱殺みたいなかんじなので、そんなに種類は豊富ではない様子。
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ここで大国主の物語に出てきた、ひどい状況を思い返してみると、
・美人の誘惑
・焼けた巨石で圧殺、焼殺
・兄軍団と殺し合い
・殺されて蘇ってまた殺されてまた蘇ってる
・蛇
・ムカデやハチの部屋
・火を放たれ危うく焼死
・地下空洞
なんか八大地獄にあるすべての要素が入っているような。
大国主の物語は、仏教の地獄の概念を取り入れているみたいなのですよ。
とすると疑問が湧いてきました。
日本神話というのは、弥生時代にはすでに原型があったのではないか、ということは言われていることなのです。
ところが日本に八大地獄を書いた仏教が伝来したのは6世紀の欽明天皇の時代というのが、定説になっているのですよ。
仏教成立 紀元前5世紀インド
弥生時代(紀元前)日本神話は存在したとされる
仏教伝来 6世紀
古事記成立 712年
もし仮に大国主の神話が、仏教の八大地獄を取り入れているのが事実としたら。
しかも弥生時代にすでに存在したことも事実ならば。
中央アジアに仏教が伝播したのが紀元前250年。東アジアに入ったのが西暦100年頃。
大国主神話に八大地獄が含まれるのが本当ならば、
おそらく1世紀から4世紀までの間に、元々あった大国主の神話のなかに、仏教の八大地獄が取り入れられていることになるかもですが。その理由は関連記事で。
個人的には日本神話はユーラシア神話の寄せ集めで、日本列島では4世紀以降に一緒くたにまとめられたと見ているわけなのですが。真相はどうなのか。
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